『かずける、かづける(託ける)』という“託”の3つめの読み方

 『ことづける(託ける)』と『かこつける(託ける)』の意味の違いについて説明しましたが、“託”には、『かずける、かづける(託ける)』というもうひとつの大和言葉の読みが当てられていました。

 『かずける、かづける』の「かずく〔かづく〕」に【託く】という漢字を当てる場合、「口実にする」、「人のせいにする」という意味になります。そして、口実を設けることやそのような言い方を「かずけごと〔かづけごと〕【託け言/託け事】」と云います。“託言”を意味する『ことづける(託ける)』または『かこつける(託ける)』と同じ内容を表現しています。


 「かずく〔かづく〕」には、他に【被く】や【潜く】の漢字が当てられた意味があります。

 【被く】:かつぐ【被ぐ】【担ぐ】とも読む。
    1.頭の上から覆う。かぶる。
    2.貴人から褒美に衣服をちょうだいする。  
    3.損害・負担などを引き受ける。
    4.だまされる

 【潜く】:水中にもぐる。

 かずけもの〔かづけもの〕【被け物】:功績や労苦に対して与える贈り物。衣服などが多い。


 こうしてみると、「かずく」には、責め立て被せる<受信1 対 発信N>コミュニケーションの構造があります。掲示板にて発言が集まる様子をイメージしてしまいます。

 “託”には『ことづける』『かこつける』『かずける』の3つの読み方があり、思いを一方的に押し付ける行為を意味として集約することができ、「思い」というオブジェクトありきの被役的表現として分別することができると思います。

 つまり、【言付け】は使役しているようにみえて、実は被役なのだと。