『言霊信仰』と【言付け】文化

 言葉を何かに託して思いを表現する【言付け】文化は、言霊信仰につながります。

 人力検索はてな による『言霊』とは?を参考にしていただきたいのですが、『言霊』は思考や行動を統制する観念を支配するものだと私は思います。

 例えば、良い言葉を口にし、悪い言葉は口にしないようにする心理があげられますが、これはポジティブに見ようとする主観を支えるものです。想定したくないことは言葉を封じて、理想にしたいことは言葉を連呼する。『言霊』は、“名付け”したものを差別・逆差別する世界観を構成する忌む思想であり、御霊信仰・怨霊信仰につながっていきます。

 【言付け】は、“託言”という語を、読み方によって分けた片方の意味になります。もう片方は、「口実(=かこつけ)」と呼ばれる、霊が込められていない言葉を意味します。

 「ことづける(託ける)」と「かこつける(託ける)」の対比で説明しましたが、本来の「託つ(かこつ)」は、何かのせいにして嘆き恨む意味でした。しかし、現在では霊(魂)が入ってない「口実(=かこつけ)」を意味するようになってしまいました。「言付け」と呼べば言霊がある思いとなり、「かこつけ」と呼べば言霊がない上辺の思いという違いが生まれてしまったのです。

 「口実」の本来の意味は、よく口にする言葉や言いぐさです。表情が見えない、言葉ありきのネットコミュニケーションでは、全てが「口実(=かこつけ)」であるとはいえないでしょうか。

 【言付け】文化は、「ことづける(託ける)」と「かこつける(託ける)」の両方の意味を兼ねて、言霊が入ってるかどうかは関係ないコミュニケーション文化と位置づけるべきだと思うのです。