『ことづける(託ける)』」と『かこつける(託ける)』について

 【言付け】は、漢字で“託”に置き換えられ、媒体を仲介して「たくす(託す)」意味になります。“託”は『ことづける(託ける)』と『かこつける(託ける)』の表現で使われますが、両者には意味に違いがあります。 

 『ことづける(託ける)』:「たくす(託す)」や「たく(託)する」の意味で使われます。ある物事を他人にまかせること。「預ける」との対比で用法が説明される。自分にできないことを他にゆだねる意をもつので、おまかせの‘頼みごと’と言える。そのまま言葉を遣わすだけではない【言付け】の意味に通じる。

 『かこつける(託ける)』:「こじつける」との対比で用法が説明される。とりあえず、関係ないようなことを強引に結びつける。都合のよい“口実”にする意味であり、良い印象を与える表現ではない。


 このように、『ことづける(託ける)』と『かこつける(託ける)』では、同じ“託”という漢字を使うのに、大和言葉の読みで意味に違いがあります。これは、“託言”の大和言葉表現として、『かこつける(託ける)』の意味が変化してところに原因があると思います。

 かこ・つ【託つ】:腹立たしくなる原因を他のせいにして嘆く意。
 かこち【託ち】:他にかこつけて恨み嘆くこと。
 かこち‐がお〔‐がほ〕【託ち顔】:他に事寄せ、そのせいにして恨み嘆く顔つき。
 かこち‐ぐさ【託ち種】:そのことのせいにするためのたね。口実。恨み・嘆きを引き起こすもと。
 かこち‐なき【託ち泣き】:恨み嘆いて泣くこと。

 上記の言葉を見れば、『かこつける(託ける)』が、嘆きの感情に特化したために、思いを託すネガティブな言い訳になったことが分かると思います。嘆きは他のせいにする感情なので、思いを託す行為が、正直さを奪われてしまい、実体をうつさない印象になってしまいました。そして、本当の理由を隠して利用する“口実”という意味にまで変化してきたのです。 

 “口実”扱いまでされる【言付け】は、自分の思いを一方的な表現するコミュニケーションなんですね。。。