『言い付け』と『言い伝え』の違い

 定義づけした【言づけ:言付け】と【言づて:言伝】の違いに類似した言葉として、‘言’を「こと」ではなく「いい」と大和言葉で読む「いいつけ(言い付け)」と「いいつたえ(言い伝え)」の違いについて説明します。

 【言い付け】《いい‐つけ〔いひ‐〕》
 1.命令や指示 (上から下への方向で話される情報)
 2.密告    (下から上への方向で話される情報)

  「言い付け」は従来型の口先で放つ情報です。そのままを伝える「伝言」とは違い、発信者の意図を含んだ表現として、一般に悪意ある行為とされます。


  因みに、くち‐づ・く【口付く】は、「食べなれる」、「言い慣れる」の意味です。

 【口実】は、よく口にする言葉。言いぐさ。それが転化して言い訳や言い逃れを意味するようになりました。 

 “口信”は、中国語でしか扱っていないようです。英語のメッセージ〔message〕に当ります。“口信”は「伝言」に近い表現になってしまいます。


 【言い伝え】≪いい‐つたえ〔いひつたへ〕≫
 1.口づてに伝えられてきたもの。口碑(こうひ)、伝記、諺 → “口伝”
 2.「ことづて、伝言」 → “口信”(“message”)

  「言い伝え」は従来型の口先で伝えられて残る情報。“口信”、“口付”、“口伝”に分けられる。

 『言う』と『云う』の違いに相関して、“口信”と“口伝”の対比を考えてみましたが、「信」と「伝」は上手く対比しませんでした(笑)。

 とりあえず、大和言葉で読まれる「言い付け」と「言い伝え」は、一方的に口先で放つコミュニケーションの意味で使いたいと思います。