ライ・トゥ・ミーを見て、「微表情」が怖くなった


海外ドラマ『ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間』観たい!
『ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間』第1話の感想を教えてください


 『ライ・トゥ・ミー 嘘の瞬間』は、とても斬新な作品だと思います。「微表情」という0.2秒未満の表情を根拠に、推理を展開していくサスペンス・ストーリーなのですが、ここまで表情や仕草に注視する作品を、私は他に知りません。普通のサスペンスは、登場人物の発言や行動の不自然さをきっかけにするので、矛盾などを浮き上がらせるための状況描写が多くなります。一方、『ライ・トゥ・ミー 』の場合は、登場人物の発言や行動ではなく、表情や仕草の瞬間映像を扱うだけで推理ができます。

 心理分析による推理は、登場人物のプロファイルデータにたよるストーリーになるのですが、『ライ・トゥ・ミー 』は、相手の表情を読み取って裏づけを図るので、事件現場の物証をかき集めるプロセスが驚くほど少なくなってます。一話の中で二つの事件を解決できるほどの展開力は、事件現場や登場人物などの情景描写が少なくしているからです。

 第1話でも、一つ目の事件の合間に新メンバーを空港で勧誘して、その新メンバーが並列進行している別の事件で早くも大活躍するという勢いある展開には圧巻です。登場人物の感情が排除され、まるで議論によって話が進行しているかのようです。日本との文化ギャップのせいかもしれませんが、登場人物のほとんどがクールな印象を受けました。

 心理分析の対象である「微表情」を中心にするにすれば、立ち位置によって登場人物の感情を際立たせる演出構成は必要ないのでしょう。登場人物は、覗き込む表情と覗き込まれる表情が大半を占めていますが、そのおかげで視聴者は心理分析モードを楽しみやすくなっています。意識された表情よりも、「無意識に出てしまう微表情」をテーマにする物語の登場人物は客観モードがぴったりです。

 この『ライ・トゥ・ミー 』で説明される「微表情」の分類には納得仕切りです。「微表情」が判ってしまえば、あらゆる反射的感情が判ってしまうという基本的な説明は真理だと思います。もちろん、『ライ・トゥ・ミー 』の中での無理やりな推理までを受け入れるわけではありませんが、「意識する前の微表情」に真実があるというのは疑いようがありません。

 実生活でも、「あっ、変な表情が・・・」というのは多々あります。かといって、一瞬しか現れない微妙な表情を確信を持って判別するのは中々出来ません。やはり、意味や意識ばかりが尊重される文明社会で生きると、表情を読み取る力が退化するのでしょうか。カメラでも無ければ、「微表情」に気づいても、相手の表情が何をきっかけにしたものかまで検証するのは不可能に近いはずです。

 しかし、ドラマでやってたようにカメラで相手の表情を保存できれば、「微表情」によって心理分析するのは可能なはずです。さらに、カメラ&コンピュータの時代が進めば・・・いやー恐ろしいですね(笑)