「信託」という言葉はあっても「伝託」という言葉はない

 『言う』と『云う』、そして「謂う」の違いで、『言う』は、自分の言葉であり、『云う』は、周りの言葉と説明しましたが、人偏を付けた【信】と【伝】の違いについて考えます。


 【信】は、自分の言葉なので、特定の相手を対象に「託す」ことができるので、「信託」という用語も可能になります。

 【伝】は、周りの言葉なので、特定の相手を対象にしないので、「託す」ことはできないので、「伝託」という言葉は不可能になります。


 「信言」という言葉は、特定の相手を対象にできるから「信じる言葉」になれます。『老子』の言葉に、〝信言は美ならず、美言は信ならず〟がありますが、特定の相手だから美言にならないのではないでしょうか。

 「伝言」は、特定の相手を対象にしていないので、意思を加えてはいけません。事実を伝えることに絞らないとデマになってしまいます。


 「信書」は、「特定の受取人に対し、差出人の意思を表示し、又は事実を通知する文書」になります。「信書」以外のメール的な書類運送物を「伝書」と呼んでもいいのかもしれません。


 こうしてみると、【信】と【伝】の違いが分かりやすくなってくると思います。